・複数ローソク足分析とは
・2本ローソク足分析
・3本/複数ローソク足分析
複数ローソク足分析
前回はローソク足トレード【前編】でした。
特に意識していなかったかもしれませんが、前編では1本のローソク足だけが対象でした。
しかし価格分析精度を上げるためには、1本ではなく複数のローソク足からより多くの手がかりを知る必要があります。
本記事では2本以上の複数ローソク足の基本的な特徴を学んでいきましょう。
2本のローソク足分析
まずは2本のローソク足分析のうち、重要な6つのパターンを順にみていきましょう。
①かぶせ線
かぶせ線とは大陽線の中心付近まで陰線が上からかぶさったものです。
前のローソク足の終値よりも後のローソク足の始値が高いが、陽線の中心付近まで価格下落するとかぶせ線となります。
かぶせ線は上昇か?と思わせた後に価格を大きく戻す(下げる)値動きが特徴で反転下落(売り)を示唆します。
かぶせ線を1本にまとめると、上昇から一気に下落転換した売りを示唆する上影陰線(上ヒゲ)となることが見て取れます。
・売り手は価格が上昇すると損をするので、損切りの買い戻しをしなければなりません。
・価格上昇するほど多くの売り手の損切り買いにより価格はさらに上昇します。
・価格上昇後するほど多くの買い手が利益確定売りをし、急上昇から一転して価格は一気に下落します。
※価格の急上昇や急下降に乗じた新規売買勢が多く参入する場合はさらに価格に拍車をかける。
売り手の損切り買いが価格上昇を引き起こしたに過ぎず、上昇後は主に利益確定など買い圧力に比べて売り圧力が圧倒的に強い状態です。
FXは誰かを損切りさせることによりお金を稼ぐゲームです。
売り手に損切り買いをさせて価格上昇すれば買い手の勝利、買い手に損切り売りさせて価格下落すれば売り手の勝利となります。
急上昇後や急下降後はローソク足の形を確認し、その値動きが本物かダマシをしっかりと見極めることが必要です。
かぶせ線は天井または長期時間足(日足以上)で出現するほど、転換の強いシグナルとなることも覚えておきましょう。
②切り込み/切り返し線(買い示唆)
切り込み線とは大陰線の中心付近まで陽線が下から切り込んだものです。
前のローソク足の終値よりも後のローソク足の始値が安いが、陰線の中心付近まで価格上昇すると切り込み線となります。
かぶせ線は上昇か?と思わせた後に価格を大きく戻す(下げる)値動きが特徴で反転下落(売り)を示唆します。
かぶせ線を1本にまとめると、上昇から一気に下落転換した売りを示唆する上影線(上ヒゲ)となることが見て取れます。
切り込み線は下落か?と思わせた後に価格を大きく戻す(上げる)値動きが特徴で反転上昇(買い)を示唆します。
切り込み線を1本にまとめると、下落から一気に上昇転換した買いを示唆する下陰線(下ヒゲ)となることが見て取れます。
買い手の損切り売りが価格下落を引き起こしたに過ぎず、下落後は主に利益確定など売り圧力に比べて買い圧力が圧倒的に強い状態です。
切り込み線は底または長期時間足(日足以上)で出現するほど、転換の強いシグナルとなることも覚えておきましょう。
注意
かぶせ線と切り込み線は損切りとダマシの値動きを示す
③つつみ線
つつみ線とは前のローソク足の実体を後のローソク足の実体がつつんだもの
陰線で包まれたものを陰線つつみ、陽線で包まれたものを陽線つつみといいます。
陰線つつみは①かぶせ線より下落幅が大きく、陽線つつみは②切り込み線より上昇幅が大きいことが見て取れます。
陰線つつみは①かぶせ線よりも信頼度の高い下落シグナル、陽線つつみは②切り込み線よりも信頼度の高い上昇シグナルになります。
ざっくり言うならば、陰線つつみは上昇失敗+安値更新成功、陽線つつみは下落失敗+高値更新成功となるからです。
①かぶせ線は上昇失敗も安値更新はしていない、②切り込み線は下落失敗も高値更新はしていません。
つまりつつみ線はダマシ後に反転した値動きがより大きく力強く確かであることを示唆する信頼性の高いシグナルです。
ポイント
つつみ線は①かぶせ線や②切り込み線より信頼できるシグナル
④はらみ線
はらみ線とは大陽線/大陰線の実体に陽線/陰線が収まったものです。
大陽線/大陰線(親)が小陽線/小陰線(子)を孕(はら)んでいる様子を表しています。
はらみ線は一旦価格を下げきり/上げ切り、その後は高値も安値も更新せず値動きが小さく相場が少し迷っている状態です。
価格は通常下がるほど売りたい人は少なくなり、上がるほど買いたい人は少なくなります。(買うなら安く、売るなら高くが基本)
そのため一旦下げきった価格は徐々に上昇、上げきった価格は徐々に下落へと向かうのが相場の習性です。
はらみ線は価格転換の気配を表し、特に相場の底や天井で発生した場合に信頼度が高くなります。
つつみ線とはらみ線どちらがより強い転換示唆かと言われれば断然つつみ線です。
つつみ線は陽線つつみなら下落を否定して上昇、陰線つつみなら上昇を否定して下落しています。
しかしはらみ線の場合、上昇であれ下落であれ高安値を更新しようとする試しの動きは発生していません。
注意
はらみ線はつつみ線より弱い転換シグナル
⑤毛抜き線
毛抜き線は陽線と陰線が順に並び、それぞれの高値もしくは安値が揃ったものです。
高値が揃ったものを毛抜き天井、安値が揃ったものを毛抜き底といいます。
毛抜き天井の場合、再度天井つまり高値更新できずに下落となるため天井打ち(下落転換)を示唆します。
毛抜き底の場合、再度底つまり安値更新できずに上昇となるため底打ち(上昇転換)を示唆します。
毛抜き線は高安値更新を試して失敗したことを示しており、はらみ線よりは強い転換シグナルです。
ただ毛抜き線は高値か安値が揃っていれば反転した値動きの大小は問わないので、値動きの大きなつつみ線より反転の信頼度は劣ります。
転換シグナルランキング
つつみ線>毛抜き線>はらみ線
⑥出会い線
出会い線とは前日終値より当日終値が上もしくは下に放たれるも、その後前日の終値まで戻したものです。
前の終値と後の始値のギャップがあることを窓(窓開け)と呼ぶため、出会い線はギャップがなくなった(窓埋め)形状を示します。
出会い線を上抜くと買いシグナル、下抜くと売りシグナルになります。
下から上に接近してくる出会い線は下落に思えたが上昇してきた、つまりダマシの下落を示しています。
その後さらに上昇し前のローソク足の終値(出会い線)を抜いていくと上昇転換示唆になります。
価格が出会い線は超えると(ブレイクすると)値動きは強く動きが本物である可能性を示唆します。
価格が出会い線を超えられないと(反発すると)値動きはそこまで強くなく反転する可能性を示唆します。
出会い線をブレイクした場合はブレイク方向に順張り、反発した場合は逆張りと値動きに応じてトレードするのが良いです。
2本ローソク足分析まとめ
①かぶせ線は下落示唆
②切り込み線は上昇示唆
③はらみ線は転換示唆(天底打ち)
④つつみ線は転換示唆(天底打ち)
⑤毛抜き線は転換示唆(天底打ち)
⑥出会い線は抵抗線
複数のローソク足分析
これまで1本と2本のローソク足分析をしてきたので、最後に3本以上の組み合わせをみていきましょう。
複数ローソク足分析では「酒田五法」と呼ばれるローソク足の分析手法を紹介します。
酒田五法 (さかたごほう)とは、出羽国(現在の山形県酒田市周辺)出身の本間宗久が考案した複数のローソク足による相場分析手法です。
酒田五法は五つの法則から相場における買いと売りの法則を導いています。
①三山
三山は3つの山によって天井が形成されたパターンで、以下通称があります。
- ヘッドアンド・ショルダーズ・トップ:中央の山を「頭」、両端の山を「肩」に見立てる。
- 三尊天井(さんぞんてんじょう):3つの山を3体の仏(釈迦三尊)に見立てる。
- トリプルトップ:高さがほとんど同じ山が3つある。
三山は天井圏で確認されることが多いパターンで基本的には下落示唆となります。
3つの山を形成しますが天井圏あるいは中央の山を超えることが出来ない上値が重い状態です。
高値更新あるいは天井ブレイクに失敗するほど売り手と買い手と待ち手の心境は以下のようになります。
買い手:価格上昇の見込みは薄いし利益確定売りでもしようか(売り)
売り手:価格上昇の見込みは薄いし損切り買いはしないでおこう(保留)
待ち手:価格上昇の見込みは薄いし新規売りでもしてみようか(売り)
相場の習性とお話もしましたが、上がり過ぎた価格はそのうち下がり、下がり過ぎた価格はそのうち上がります。
上がり過ぎた価格は売るには魅力ですが買うには魅力が薄く、下がり過ぎた価格は買うには魅力ですが売るには魅力が薄いです。
三山の天井付近では価格が十分高いと認識されるため買い需要よりも売り需要が高くなり、やがて価格は下落していきます。
3つの山が形成された三山の安値付近はサポートラインあるいはネックラインと呼ばれます。
三山が形成された後、このネックラインを下に割り込むと反転下落に勢いづくケースが非常に多いです。
三山トレード基本
・三山完成で利益確定売り検討
・三山完成で新規売り検討
・三山ネックライン割り込みで損切り売り/新規売り
②三川
三川は3つのローソク足を用いたパターンと三山を逆にしたパターンの2種類があります。
三川パターン①
明星(みょうじょう)とは金星の別名であり、宵(よい)、真ん中のローソク足を金星に見立て下落なら宵、上昇なら明けとします。
宵の明星は上昇に失敗した後に安値更新しているので、ローソク足2本の陰線つつみの3本版とも考えれます。
明けの明星は下落に失敗した後に高値更新しているので、ローソク足2本の陽線つつみの3本版とも考えられます。
三川パターン②
三川は三山を逆にした3つの谷によって底が形成されたパターンで、以下通称があります。
- ヘッドアンド・ショルダーズ・ボトム:中央の底(谷)を「頭」、両端の谷を「肩」に見立てる。
- 逆三尊底(ぎゃくさんぞん):3つの谷を逆向きの3体の仏(釈迦三尊)に見立てる
- トリプボトム:高さがほとんど同じ底(谷)が3つある。
三川は底値圏で確認されることが多いパターンで基本的には上昇示唆となります。
3つの谷を形成しますが底値圏あるいは中央の底を超えることが出来ず底値が固い状態です。
三川は三山が上下反転したものなので考え方も以下のように逆にします。※逆の箇所を赤字表記
三川トレード基本
・三川完成で利益確定買い検討
・三山完成で新規買い検討
・三山ネックライン割り込みで損切り買い/新規買い
三山と三川トレードは長期の時間足では特に有効性が高く、長年に渡り多くの人により利益が出ると証明された手法です。
ただ有効な手法と言えども、確実性が保証されたものではありません。
三川は売り示唆、三山は買い示唆ですが、その時々の相場情勢やプレイヤーによってダマシや真逆の値動きを見せることがあります。
値動き特性とローソク足トレードの基本を知ることで、例外時いち早く退出(損切り)あるいは参入しないことが何より重要です。
注意
うまくいくパターンの他にうまくいかないパターンを知ることも重要
③三空
三空とは前のローソク足の終値と後のローソク足の始値にギャップがある(窓がある)形が3つ続いた形です。
上に3つの窓が空いたものを三空踏み上げ、下に3つの窓が空いたものを三空叩き込みといいます。
FX市場(外国為替市場)は全世界でほぼ24時間絶えず大量の取引が行われおり、3回連続で価格ギャップをつけることはほぼありません。
これが例えばマイナー株になると売り買いする人が少なくなり、十分な取引量がないため自分の希望価格で売買できないことも多いです。
1,000円で買いたいのに1,050円でないと売りたい人がいなくて買えない、次は1,100円のように価格ギャップが生じます。
酒田五法のうち三空は現代のFX市場では完全一致しないですが、複数ローソク足から価格の勢いの強さを的確に表すものです。
三空は発生しないにせよ、FXでも週明け価格が週末価格より高くなったり低くなったりすることがあります。(窓開け)
ギャップである窓開け価格は大きいほどそして続くほど、上下のギャップ方向への値動き可能性が高いと考えるようにしましょう。
ポイント
FXでは週明けのギャップを注視せよ
④三兵
三兵とは陽線や陰線が3本続くパターンで、陽線が3本続くものを赤三兵、陰線が3本続くものを黒三兵と呼びます。
昔は陽線を赤、陰線を黒で示すことが多いことが理由で、兵とはローソク足の値動きの優勢を兵隊に例えているようです。
赤三平と黒三平で重要なことは、単純な売買シグナルではなく強弱のシグナルとして考えるべきです。
赤三平であれば上昇圧力が強く、黒三兵であれば下落圧力が強いですが、それが直ちに買いもしくは売りシグナルになるかは別問題です。
例えば底値圏で赤三兵が出れば下落の勢いはもはやなく買いの圧力が高まっているため買いシグナルとなります。
ところが価格がグングン上伸している時にさらに大きな赤三平が出た場合、買いシグナルと考えるのは危険です。
なぜなら価格が急上昇した後は多くの利益確定売りによって価格が下がることもあり、上昇中の赤三平で買うと高値掴みリスクがあります。
三兵は前後のローソク足の形状を含めて判断するのがよく、例えば下ヒゲ後の赤三平は上昇する可能性が高いです。
価格がすでに上昇した後で赤三平後に上ヒゲが出れば、買いは過熱しているので、利益確定売りのシグナルと良いです。
注意
赤三兵は買い、黒三兵は売り、ではない。
⑤三法
三法とは大陽線/大陰線の後に3本の小陰線/小陰線がつづく形をいいます。
大陽線に3本の小陽線がつづくものは上昇を示唆する上げ三法、大陰線に3本の陽線がつづくものは下落を示唆する下げ三法と呼びます。
相場には調整局面といわれる価格が一時的に逆行する局面があり、三法はその様子を表すものです。
上げ三法を例にとりなぜ価格がなぜ逆行するかを段階的にみてみましょう。
STEP1
大陽線が出ているので買い手は利益、売り手は損失を抱えます。
そしてこの時点で一部の機敏な買い手は利益確定の売りをします。
STEP2
機敏な買い手の利益確定売りによって価格は少し下落します。
次に機敏な買い手たちは一旦価格は上げきったのでは?と利益確定売りをします。
STEP3
利益確定売りで価格が下がり残った買い手達も利益をこれ以上減らすまいと利益確定売りをします。
この時点で大方の買い手は利益確定売りをし価格下落圧力が小さくなると、安く買えるチャンスと多くの買い手により価格は再上昇します。
FXでも商売でも安い時に買って高い時に売るが基本です。
三法は安い時に買った人が高くなって売る、再度安くなった際にはまたチャンスと買いが殺到する。
このようにFXの基本原則あるいは上下に波打ちながら進む相場習性を示すのが三法です。
ポイント
上げ三法では上げ始めまで下落した時は絶好の買い場(押し目買い)
下げ三法では下げ始めまで上昇した時は絶好の売り場(戻り売り)
複数ローソク足まとめ
実際のチャートを使った売買例までを予定していましたが、ボリュームが多くなりすぎるため次記事へと断念させてください…笑
前回のローソク足トレード【前編】と今回の【後編】、いずれも非常に基本的な内容になっています。
FXをする目的は勉強して暗記することではなく、トレードから利益を出すことこそ目的です。
そのため基本よりも応用あるいは実戦が圧倒的に重要ですが、基本や基礎体力も同じように重要です。
次回以降は学んだローソク足の基礎体力を元に、実際のトレードで使える技能を身につけていきましょう。