・ナンピンとは
・ナンピンのメリット/デメリット
・ナンピンすべきかどうか
ナンピンとは
ナンピン(難平)とは「困難な状況を平にする」という意味です。
投資では買ったのに値下がりしたもの追加で買うこと、売ったのに値上がりしたものをさらに売ることをいいます。
では上図を加工してナンピンの効果について見てみましょう。
最初に100円で買ったものが値下がりし、98円でナンピン買いをして、価格が少し上昇し99円で両方を売った図を示しています。
98円でナンピン買いしたものを99円で売ると+1円、最初に100円で買ったものを99円で売ると−1円、ナンピンにより損益は0円となりました。
100円で買ったものが値下がりしてもナンピン買いしなかった場合、損益0とするには青色部まで価格が上がることを期待して待つしかありません。
ナンピンを言葉で表すなら、最初にタイミング悪く売買したものの損を、タイミング良くナンピン売買したものの得で打ち消し救うことができます。
本やサイトの多くはナンピンを推奨していませんが、実際にナンピンをうまく用いてトレードしている人が多いのも事実です。
ナンピンとその効果はご説明の通りですが、本記事ではナンピンのメリットとデメリットを踏まえナンピンはすべきかどうかを実例で確認していきます。
ナンピンのメリット/デメリット
ナンピンのメリットは上図のように、売買のタイミングが良くかつ売買後に得する方向に価格が進んだケースです。
ナンピンがうまくハマれば、最初の売買のマイナスをナンピンした売買のプラスで相殺、さらに両方ともプラスになれば当初より利益を増やすこともできます。
ただ既にお気づきの方もいるかと思いますが、これはナンピン買いのタイミングと価格の動きが良い場合ですよね?
ナンピン買い後に価格が下がったケースではどうでしょうか?
今回も同様に98円でナンピン買いしましたが、98円から価格は上がることなく97円に下落しました。
ナンピン買いしなければ最初買ったものだけ−3円の損でしたが、ナンピン買いの−1円の損も上乗せされました。
ナンピンのメリットはタイミングと見立てが良ければ損失を小さくするどころか利益を大きくします。
ナンピンのデメリットはタイミングと見立てが悪ければ損失を当初よりも増大させてしまいます。
ここまでだと「ナンピンすべきか?」に答えはないかのように思えますが、教科書的ではない相場経験からこの問いにこれから答えたいと思います。
答えは、相場環境を見極めた上での計画的なナンピンならしても問題ありません。
ここからは、この答えの根拠について説明していきます。
ナンピンすべきかどうか
この章ではナンピンすべきかどうかをグランビルの法則というテクニカル分析モデルで説明していきます。
グランビルの法則に関して詳しくない方は、以下の記事も参考にしながら読み進めていただけると幸いです。
この記事でわかること ・グランビルの法則とはなにか ・買うポイント4つと売るポイント4つ ・グランビルの法則の実戦応用 グランビルの法則とは グランビルの法則はアメリカの投資分析家ジョセフ・E・グランビルによって考案さ[…]
ナンピンしてもよいケース
ナンピンはタイミングと見立てが良ければ成功します。
つまりナンピン後に価格が見立て通り動く可能性が十分に高いポイントでは、ナンピンをしてもよいです。
グランビルの法則図を用いてそのポイントを説明していきます。(ナンピン「買い」を対象とします)
※価格が有利な方向に動く可能性が十分に高いポイントでナンピンするならば、他トレンド系指標やオシレーター系指標を活用しても全く問題ありません。
グランビルの法則での買い推奨ポイントは、移動平均線が上向きの時にローソク足(価格)が移動平均線を下回る「買い②」のポイントです。
ただ実際の相場では、買い②まで価格を下げず押し目ポイント①から再上昇する、押し目ポイント②まで予想より下げて再上昇する、どちらかは予測不能です。
ではどうするか、「押し目ポイント②でのナンピン買いを前提に押し目ポイント①で打診買いをします。」
価格が今にも上昇する可能性が高いが、一時的にもう少しだけ下落調整が入りそうなこのポイントはナンピンに適しています。
このポイント付近でナンピンなしとありを比較してみましょう。
ナンピンなし (買い②のみで買える)
買い②まで下がらずに再上昇した場合、買えずに利益を取り逃す機会損失リスクがある。
買い②まで待つか、買い②で買えても思いのほか価格を下げてしまう価格下落リスクがある。
ナンピンあり(打診買い可能)
ポイント①で打診買いできるので、買い②まで下がらず買えない機会損失を避けられる。
買い②より思いのほか価格が下がってもポイント②でナンピンでき、①と②の価格を平均すると実質買い②付近で買えたことになる。
今回ナンピンしてもよい押し目ポイント②を改めて言葉で整理すると、
- 価格が有利な方向に動く可能性が十分高いポイント
- 買い②まで待って買えない機会損失を避けるポイント
- 買い②から価格が下がるリスクに対処するポイント
とはいえ相場に絶対はなく押し目ポイント②でナンピン買いしても運悪くさらに価格を下げることもあります。
買い②で1単位買う予定であったならば、押し目ポイント①で半分の0.5単位を打診買い、押し目ポイント②で0.5単位をナンピン買いとしましょう。
機会損失や価格下落のリスクに対してナンピンしているので、無計画に買う量を増やしては価格下落時の損失を結局拡大してしまい元も子もありません笑
必ずしもナンピン=悪ではないと伝えるために「ナンピンしてもよいケース」との表現を使っています。
これはナンピンをしなさいと推奨しているわけではないことを最後に補足しておきます。
ナンピンしてはダメなケース
ナンピンしても良いケースは、価格が有利な方向に動く可能性が十分高いポイントでしたよね。
逆に価格が有利な方向に動く可能性が低いポイントでは絶対にナンピンをしてはいけないことになります。
ナンピン「買い」を考える場合、以下グランビルの法則図の売り①〜④はすべてナンピン厳禁です。
ナンピン買いしても良いポイントは買い②の1ポイントしかありませんが、ダメなポイントは4ポイントもあるのです笑
ナンピン買いしても良いポイントは非常に限られており、上昇可能性が十分高くかつ価格がそこから下げにくいポイントです。
ナンピンは諸刃の剣でトレードの手練れであれば効果的に活用することもできます。
テクニカル分析やトレードスキル、計画性を持った冷静なトレード、これらに自信がない人は「ナンピンはしない」と決めてしまっても良いかもしれません。
ナンピンまとめ
相場格言に「下手なナンピン素寒貧(スカンピン)」正しいナンピンをしないとお金を失いますよとある通り、
ナンピンは相場環境やポイントを的確に見極められないと、損失を増大させ相場での寿命を縮める自殺行為でしかありません。
このことから多くの書籍やサイトでは特に初心者にナンピンを推奨するものはないのでしょう。
ナンピンをしている時、多くのトレーダーは感情的もしくはトレードルールを破っていることが多いような気がします。
そもそもナンピンをする前に損をしたポジションを手仕舞う、押し目や戻り目まで価格が到達しない機会損失を受け入れる。
ナンピンの是非もあるかと思いますが、事前のトレードルール策定と遵守、これがなにより重要であることは言うまでもないかと思います。