・出来高指標とは
・出来高指標トレード
・出来高指標トレードまとめ
出来高指標とは
テクニカル分析ツールはトレンド指標やオシレーター指標の他に出来高指標があります。
出来高は相場でどれだけ売買が活発に行われているかを取引数量で表したものです。
FXでは出来高を正確に計測するのは難しく、取引量ではなくティックという価格更新の回数を元にしたティック出来高が用いられます。
そして出来高指標には2つの役割があります。
- 価格の確認指標
- 価格の先行指標
出来高指標はそれ単体で用いるというよりは、価格自体やその他指標と併用し価格の確認あるいは予期に役立たせるものです。
ここからは実際の出来高指標を個別に見ていき、価格チャートやトレンド指標と出来高指標をどのように使いトレードするかをまとめていきます。
出来高指標の一覧
出来高指標にはいくつか種類があるので、基本的なものからそれをベースに変形したものを順に見ていきましょう。
種類を暗記するというよりは、FXにおける出来高の考えられ方はどのようになっているか計算から中身を理解することに努めましょう。
①OBV
OBVとはOn Balance Volumeの略で、グランビルの法則で有名なジョセフ・グランビルが考案した出来高指標です。
Balanceとは差し引きした「残高」を意味するので、On Balance Volumeは差し引きした出来高と解釈すると良いです。
以下のSTEP1〜4の手順で、買いによる出来高(+)と売りによる出来高(−)の差し引きし出来高を累計していきます。
STEP1
OBV開始日の終値と出来高を基準とする
STEP2
価格が前日より上昇していれば出来高を+として加える(買いの出来高と見なす)
STEP3
価格が前日より下落しれいれば出来高を−として差し引く(売りの出来高と見なす)
STEP4
価格不変の場合は前日の出来高をそのまま引き継ぐ
価格が+か−かで出来高の加減がされ連続的な累計出来高となるため、値上がりや値下がりが偏り出来高が大きくなればOBVは大きくなります。
ただOBVは現在の価格トレンドの強さを確認したり、矛盾する価格の動きからトレンドの反転を予期することが主な目的です。
そのためOBVの数値がどれだけ大きいかというよりは、OBV線と価格トレンドに相関性があるかないかに焦点をあてましょう。
VA
OBVを応用した出来高指標にVA(Volume Accumulation)というものがあります。
VAは①OBVの問題点を修正し②値動きを計算したものです。
OBVの問題点
問題点1:OBVは当日の価格が前日よりわずかな上昇でも当日の全出来高が+に算入され、実態の出来高から歪む可能性がある。
問題点2:OBVは当日の出来高が大きくとも価格が前日よりわずかに下落すれば全出来高が−に算入され、実態の出来高から歪む可能性がある。
OBVの計算
VA={[(C−L)−(H−C)] / (H−L)}×V
C(lose):終値
L(ow):安値
H(igh):高値
V(olume):出来高
OBVは当日の終値だけで全出来高が+か−になるのに対して、VAは終値が当日のどの水準かに基づき一定割合の出来高を+か−します。
以下はいずれも高値が100円で安値が99円ですが、終値の水準が異なる3パターンで出来高はどう違うかをまとめたものです。
ケース1(高値引け) | ケース2(安値引け) | ケース3(中値引け) | |
終値 | 100 | 99 | 99.5 |
安値 | 99 | 99 | 99 |
高値 | 100 | 100 | 100 |
出来高 | V | −V |
0 |
終値が安値に近いほど減算される出来高は−100%(−1倍)に近く大きくなります。(ケース2)
終値が高値と安値の中間値の場合は0となり出来高の加減はされません。(ケース3)
OBVは終値が前日より高いか低いかだけを基準に出来高算出しますが、VAは終値の水準つまり価格に即した出来高を算出しているのが最大の特徴です。
A/D(Accumulation/Distribution)
OBVを元にした出来高指標がVAであることは既に見てきましたが、さらにVAを元にした出来高指標がA/D(Accumulation/Distribution)です。
Accumulationは「蓄積」で+の出来高が加わること、Distributionは「発散」で−の出来高が加わるという解釈をすれば良いです。
VAで確認した通り、終値が高値に近いほど加算される出来高は100%(1倍)に近く大きくなり、安値に近いほど同様に減算される出来高は大きくなります。
A/Dの計算式
A/D={[(C−L)−(H−C)] / (H−L)}×V / +前日A/D
※赤線部はVAになっている
OBVとA/Dとも大きな動きに変化はなく似たような形状になっています。
OBVと比較してA/Dは価格水準を出来高に反映するので、価格にトレンドが出た際は出来高推移の感応度が高くなる傾向があります。
出来高指標トレード
それでは出来高指標トレードについて見ていきたいと思います。
FXトレードにあたってテクニカルツールやシグナルの数は数多くあるので、売買ルールも数多くあるような気がします。
しかしながら、大きく分けるならば価格トレンドに沿った「順張り」と逆らった「逆張り」の2つしかありません。
出来高指標はトレンド継続の確認指標とトレンド反転の先行指標として機能するので、価格チャートと出来高指標を用いたトレードを見ていきましょう。
①確認指標として順張り
テクニカル分析の元祖となるダウ理論でも、「価格は出来高でも確認されなければならない」とあります。
出来高指標トレードは価格の確認指標として使います。
つまり出来高指標が価格に対して順行していれば、その方向に沿った順張りのトレードをします。
この図では価格が下落している時に急増する出来高、出来高指標も価格と順行して−方向に増えています。
つまりこのような時は、このチャートよりさらに短い時間足のチャート(細かい時間)で売りポジションをつくり順張りトレードのみを基本にします。
②先行指標として逆張り
出来高指標は価格の確認指標でありますが、もう1つ重要なことは価格の先行指標となることがあります。
相場では価格とトレンドが圧倒的に重要であると説明してきましたが、価格だけを見ていてもそこから先行きを予測するのは難しいです。
出来高指標の最大のメリットは指標から価格が今後どう動く可能性があるかを推察することができます。
この図では価格が横ばいにも関わらず出来高指標が上昇しており、その後ほどなくして相場は上昇していきました
つまりこの例では出来高指標が価格に先行しています。
魔法のような指標とまではさすがに言えないですが、価格が動く原理を考えると出来高指標の有効性の高さはわかるでしょう。
価格が動くとは買いであろうが売りであろうが、片方に需要が大きく偏り多くの人や多くの数量が取引されるということです。
つまり価格が目に見えるほど変化していなくても、その背後あるいは水面下で買いもしくは売り需要が増大すれば、近いうちに出来高の方向に価格は動きます。
価格が動けば出来高は価格方向に増える、あるいは出来高が増える方向に価格は動くのが自然です。
出来高指標が先行指標として逆張りに効果がでるケースでは価格と出来高が不自然な状況であり、出来高指標は監視カメラのごとくその不自然を見つけます。
出来高指標トレードまとめ
出来高を見ることで相場がどうであるかどうなろうとしているかの手がかりを掴むことができます。
相場がどうなるかはもちろんわかりませんが、出来高を監視することで価格への準備や反応は少なくとも早くなるはずです。
順張りのトレンドフォロートレーダーであろうが逆張りのカウンタートレーダーであろうが、出来高の確認は高確率なトレードのため無視できないでしょう。